浸水履歴を調べ始めると、「この場所は大丈夫なのかな」という気持ちが途中でどこかへ行ってしまって、地図を眺めたまま終わる、ということがあります。
名古屋市緑区在住のライター、ミキオです。地域情報メディア『ミドリノワ』でエリアの暮らし情報を担当しています。わたし自身も引っ越し前に緑区の水害履歴を調べたとき、ハザードマップだけ見て「色がついていないから安心」と思いかけた経験があります。
この記事では、浸水履歴の調べ方と見方の注意点を、緑区の地形や河川の話を交えながら順番に整理します。
浸水履歴を調べたくなる場面とは
大雨のニュースが続くと、「うちの近くはどうだったのかな」と気になりますよね。引っ越しを考えているときも、住んでからも、ふとした瞬間に調べたくなるのが浸水の話です。
調べる動機は違っても、見落としやすい点は共通していることが多い。どこから手をつけるかだけで、得られる情報の質がかなり変わります。
浸水履歴とハザードマップは別の情報
迷いやすいのが、「ハザードマップに色がついていない=過去に浸水していない」という読み方です。この二つは、そもそも見ているものが違います。
- ハザードマップ
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今後、大雨や河川氾濫が起きたときの「想定浸水区域」を示した地図
- 浸水実績図
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過去に実際に浸水した記録をもとに作られた地図
名古屋市は公式サイトで「浸水実績図」を公開しています。平成12年の東海豪雨から平成25年の集中豪雨まで、6つの豪雨イベントの記録が収録されています。
ただし、浸水実績図には「全ての浸水箇所を反映したものではない」という注意事項が明記されています。短時間の浸水や流出は含まれず、深さも記録されていません。
緑区の地形を頭に入れておきたい理由
緑区は、もともと丘陵地を切り崩して開発が進んだ地域です。丘の上と谷の底では、雨水の流れ方がまったく変わります。
同じ「緑区」でも、標高が高い北東部の住宅地と、天白川や扇川沿いの低地では、雨の日の状況はかなり異なる。地番や丁目だけで判断すると、見え方が変わってきます。
河川氾濫と内水氾濫を分けて確認する
緑区には天白川・扇川・手越川・大高川・鞍流瀬川など、複数の河川が流れています。河川の氾濫と、下水道や側溝が溢れる「内水氾濫」は、別々のハザードマップに分かれています。
見落としやすいのが、この内水氾濫のほうです。河川から離れた場所でも、大雨のときに排水が追いつかず浸水するケースがあります。
名古屋市は洪水ハザードマップと内水ハザードマップを別々に公開しています。どちらか一方だけでなく、両方を重ねて確認することが、緑区では特に意味を持ちます。
住まい選びで見落としやすい具体的な点
わたしが緑区内で気になる場所を調べたとき、最初に止まったのは「道路より土地が低い場所かどうか」でした。地図上の色よりも、実際に現地へ行って周囲との高低差を確認するほうが、感覚をつかみやすいと感じています。
- 周囲の道路・隣地より敷地が低くないか
- 近くの水路や側溝の有無
- 昔の地名に「水」「川」「沼」が入っていないか
- 造成前の地目(田・畑・池など)の確認
旧地名や旧地目は、法務局の公図や国土地理院の地形図で確認できます。すぐに動けなくても、メモしておくだけで後から比べやすくなります。
過去の被害情報をどう受け止めるか
「過去に浸水したことがある=今も危ない」と決めつけるのも、「履歴がない=安全」と判断するのも、どちらも早計です。排水整備や堤防の改修が進んだ地域もありますし、逆に宅地化で雨水の染み込み先が減った場所もあります。
浸水実績図はあくまで過去の特定の豪雨での記録。同じ雨でも条件が変われば結果は違うという前提で、補助資料として使うのが現実的です。
大雨の前に動いておけること
梅雨や台風の前に、一度だけ確認しておくと気持ちが落ち着く作業があります。大がかりなことでなくていい。
天白川・扇川・手越川など、最寄りの河川名を一つだけ把握しておく
名古屋市「なごやハザードマップ」で2種類を別々に確認する
ハザードマップに記載の避難場所を確認し、家族で共有しておく
名古屋市の公式情報をどこで見るか
名古屋市は、浸水実績図を公式ウェブサイトで公開しています。PDF形式で年度別にダウンロードでき、閲覧には無料のAdobe Readerが必要です。紙で確認したい場合は、市役所西庁舎1階の市民情報センターで閲覧できます。
ハザードマップは「なごやハザードマップ」から緑区を選ぶと、洪水・内水の両方を確認できます。
詳細が知りたい場合の問い合わせ先は、名古屋市緑政土木局河川工務課(052-972-2895)です。制度の変更や情報の更新があることもあるため、申請や判断の前に公式確認をおすすめします。
よくある失敗と気をつけたいこと
実際によく聞くのが、「ハザードマップだけ見て安心した」「色がついていない場所を選んだ」というパターンです。地図は過去の特定条件での記録であり、今後のすべてを保証するものではありません。
みきお緑区は丘と低地が混在するので、同じ丁目でも場所によって差があります
複数の情報を組み合わせることが大切で、一つの地図だけで判断するのは向きません。
浸水履歴が向かないケースも知っておく
浸水実績図は「過去の特定イベントの記録」です。記録対象外の小さな浸水や、記録後に整備が入った地域の変化は反映されていません。
「記録がないから安全」ではなく「記録がないことも含めて確認が必要」という見方が、判断の土台になると感じています。
今週末から始められる小さな一歩
今日これだけやってみようかな、と思えることがあるとすれば、名古屋市の「なごやハザードマップ」を開いて、自宅の場所に印をつけるだけでも十分です。洪水と内水の2枚を見比べて、それをスマートフォンのメモに残しておくだけで、次の大雨のときに動きやすくなります。
わたしも子どもの学校の場所を基点に、避難場所との距離を一度確認したことがあります。地図を眺めるだけでも、頭の中の「なんとなく不安」が少し形を持つ感覚があって、それだけで気持ちが少し落ち着きました。
浸水の情報は、不安を増やすために見るのではなく、いざというときの動き方を決めるために見るもの。今週末、ちょっと時間のあるときに開いてみてくださいね。













